概要
球状化焼なましは、層状のセメンタイト(Fe3C)を球状化する処理で、炭素工具鋼(SK)、合金工具鋼(SKS)、軸受鋼(SUJ)には必須の熱処理です。
01 処理目的
機械構造用鋼への球状化焼なましの役割は、被塑性加工性と靱性を向上させることです。そのため、冷間でヘッダー加工を行うボルト、冷間鍛造などを行う構造部品には、必然的に球状化焼なまし材が使用されています。
工具鋼や軸受鋼は完全焼なましを施すと、層状に配列した薄板状のFe3Cが多量に生成するため、被削性が悪くなります。しかも、おのような薄板状のFe3Cは球場Fe3Cに比べて、焼入れによって過剰に固溶しやすいため、焼入焼戻し後の機械的性質が脆弱です。そのため、工具鋼や軸受鋼には必ず球状化焼なましが施されて市販されています。
02 焼なまし法
球状化焼なましは種々の方法で行われており、綱種や前組織の状況に応じて最適手段が適用されています。
主な球状化焼なまし法
(A)長時間加熱法
変態点Ar1直下の温度に長時間加熱します、長時間を要しますが、焼入品に適用することによって、他の方法よりも軟質の処理品を得ることができます。
(B)繰返し加熱冷却法
変態点Ac1直上、Ar1直下で加熱と冷却を繰り返した後、徐冷します。このときの現象は、変態点Ac1より高い温度ではセメンタイトの分断が、Ar1より低い温度では球状化が進行します。
(C)等温保持徐冷法
760~780℃に加熱した後、700~720℃位まで冷却し、その温度で数時間保持後650℃位まで徐冷し、その後空冷します。種々の綱種に適用でき、制御も容易なため工業的規模では最も多く利用されています。
球状化が良好な処理品は十分に軟化していますが、球状化が不十分な場合は、板状のFe3Cも多数存在しており、軟化も不十分であることがわかります。
お問合せ
お気軽にご相談ください
お気軽にご相談ください