概要
中性ガスである窒素ガスは、鋼に対してはほとんど不活性であり、しかも最も安価で入手しやすいため、熱処理分野では重要な加熱媒体です。
01 窒素ガス中の不純物
不活性ガスの代表であるアルゴンガス(Ar)は、鋼の光輝加熱用雰囲気として有効ですが、非常に高価ですから、工業的には安価な窒素ガス(N2)が利用されています。
しかし、N2中には不純物としてO2、H2O、CO2などの酸化製ガスが存在しますから、これらの含有量が被処理品表面の光輝性に大きな影響を及ぼします。ちなみに、最も安価な工業用ボンベ詰めN2の場合、H2O含有量は露点として約-70℃、O2含有量は1~50ppmクライです。
N2を大量に使用する場合には、液体N2の気化ガスが最も有効です。それは種々のN2の中でも安価であり、高純度だからです。ただし、液体N2は空気に触れると酸素を簡単に吸収しますから、慎重に取り扱わなければなりません。
02 光輝性に及ぼす酸素含有量の影響
N2中で光輝熱処理を行う場合、O2含有量が大きな影響を及ぼしますが、2ppm程度であれば、炭素鋼や低合金鋼は優れた光輝性が得られます。
しかし、その程度の酸素含有量であっても、クロム(Cr)を多量に含有するステンレス鋼などは、550℃を超えると急激に光輝性は劣化します。これはCrの優先酸化によるもので、高Cr鋼の光輝熱処理へのN2単独での利用は困難です。
また、炭素鋼の焼入加熱温度である850℃位では、5ppm程度のO2含有量であれば、光輝熱処理は可能といえますが、それよりもO2含有量が多くなると極端に光輝性は劣化しますから、工業的には取り扱いが非常に難しくなります。
03 N2ベース雰囲気の利用
N2ガスを単体で加熱用保護ガスとして用いる場合、高純度のN2ガスを用いたとしても、処理物表面、トレイ、加熱炉の内壁、配管材の内面などが汚染していれば、加熱雰囲気としては高純度を維持することはまったく不可能です。
表に示すように、これらの不純物や汚染物質の影響を解消できる程度に、還元性ガスまたは浸炭性ガスを添加したN2ベースガスの利用が有効です。
温度(℃) | 加熱雰囲気 | 鋼種 | 光沢度(%) | |
---|---|---|---|---|
900 | N2ーCH4系 | CH4:2.09% | SK105 | 87.9 |
SKS3 | 88.8 | |||
CH4:2.7% | SK105 | 84.1 | ||
N2-C3H8系 | C3H8:0.45% | SK105 | 90.6 | |
SKS3 | 88.8 | |||
N2-CO-CO2-H2系 | CO:20.8% CO2:0.20% H2:C39.5% |
SK105 | 79.0 |
温度(℃) | 加熱雰囲気 | 鋼種 | 光沢度(%) | |
---|---|---|---|---|
1000 | N2のみ | O2:2.3ppm | SKD11 | 66.0 |
O2:6.0ppm | 57.5 | |||
N2-CH4系 | CH4:2.09% | SK105 | 68.8 | |
SKS3 | 79.6 | |||
SKD11 | 79.2 |
炭素鋼や低合金鋼の光輝焼入れには、炭化水素系ガス(CH4、C3H8など)の添加も有効である。
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