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高炭素・高合金鋼の焼入冷却にともなう組織変化

残留オーステナイトとサブゼロ処理

投稿日 2023.02.16
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概要

残留オーステナイトが多量に残ると、焼入硬さが低下するなど多くの支障をきたすが、サブゼロ処理によって回避することができます。

01 残留オーステナイトの功罪

高炭素・高合金綱はMs点およびMf点が低いため、焼入れによって多量に残留オーステナイト(γR)を生じることがあります。多量にγRが存在すると、耐摩耗性不足や経年変化など、多くの支障をきたします。とくに冷間成形用金型に利用されているSKD11ではよく問題になります。

残留オーステナイトが多量に存在する場合の功罪

生地が軟質なため、耐摩耗性が劣る
焼入焼戻しした製品の寸法が収縮している
経年変化を生じるため、製品の寸法が安定しない
研削加工時に平面研削盤の固定用磁石につきにくい
研削加工の際に研磨割れを生じやすい
延性、靱性に対しては優位である

02 サブゼロ処理とは

サブゼロ処理とは、0℃以下の温度に冷却する操作のことをいい、通常は焼入れ直後、焼戻し前に実施します。サブゼロ処理は切削工具や金型およびゲージなどによく利用され、その目的は耐摩耗性の向上と経年変化の防止です。

高炭素・高合金鋼の焼入冷却にともなう組織変化

高炭素・高合金鋼の焼入冷却にともなう組織変化

1050℃から焼入れしたSK105の顕微鏡組織

1050℃から焼入れしたSK105の顕微鏡組織

針状のマルテンサイトと残留オーステナイトが観察できます。

焼入工程において、加熱状態の生地組織はオーステナイトであり、これらの綱種のMf点は0 ℃以下ですから、室温での焼入組織はマルテンサイト+オーステナイトです。このときのオーステナイトのことをγRといい、サブゼロ処理は室温よりもさらに冷却して理想は100%マルテンサイトにすることです。

03 サブゼロ処理の効果

焼入温度の上昇にともなって焼入硬さは高くなりますが、下図のように最高焼入硬さが得られる温度を超えると逆に硬さは低下します。

zSKD11の焼入硬さおよびγR量に及ぼす焼入温度の影響

SKD11の焼入硬さおよびγR量に及ぼす焼入温度の影響

X線強度比が大きいほど、γR量の多いことを示している。

この硬さ低下の原因は軟質のγRが増加したことによるものですから、サブゼロ処理によって硬さを回復させることができます。

 

SKD11の磁気特性に及ぼすサブゼロ処理温度の影響

SKD11の磁気特性に及ぼすサブゼロ処理温度の影響

磁気特性の変化から、サブゼロ温度が低いほどγRが減少し、マルテンサイト量が増加することがわかる。

上図は、SKD11について、マルテンサイトとオーステナイトの磁気特性の違いを利用して、サブゼロ温度にともなうγRのマルテンサイト化状況を測定したものです。サブゼロ処理することによって、最大透磁率や飽和磁束密度が上昇し、しかも処理温度が低くなるほどその値は高くなることがわかります。

 

残留オーステナイトとサブゼロ処理
投稿日 2023.02.16

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