概要
低温焼なましは、溶接、鋳造、冷間加工などによって生じた残留応力を除去し、軟化や焼入変形の軽減を目的として行われるものです。
01 再結晶にともなう組織変化
冷間加工した材料の結晶は歪を受けて長く伸び、不規則に配列しています。これらは低温焼なましすることによって、下図のように結晶は再配列しています。
上図に示すように、熱間圧延鋼板(SPHC)も冷間で曲げ加工することによって引き延ばされ、結晶粒内には多数のすべり線が発生しています。これを低温焼なましすることによって結晶粒が再配列しており、購入状態のときよりもむしろ均一で微細な結晶粒になりますこの再配列する温度のことを再結晶温度といい、炭素鋼や低合金鋼は550℃くらいです。
02 加熱温度
溶接や鋳造によって生じた鋼の残留応力は、普通は550~600℃位で加熱すると消失して軟化します。高合金綱の低温焼なまし温度は、炭素綱や低合金鋼に比べて高温です。例えば、フェライト系ステンレス綱は700~900℃、マルテンサイト系ステンレス綱は650~750℃です。また、冷間加工によって成形したSUS304製ばねの場合、400℃位の低温焼なましによって、ばね特性が改善されて、ばねとしての疲労寿命が大幅に延長されます。
03 ピアノ線の低温焼なまし
ピアノ線の場合は、ピアノ線材(高炭素綱)をパテンチング後、冷間伸線して高強度化してあるので、硬さや組織変化は一般の冷間加工品とは異なります。
上図に示すように、400℃以上の加熱によって軟化し、しかも加熱温度の上昇に比例して硬さは徐々に低下していくことがわかります。
このときの顕微鏡組織の変化を下図い示します。
加熱前の金属組織は微細パーライトと思われますが、冷間加工の影響で加工方向に長く伸ばされた様相を呈し、結晶粒や金属組織の判断は困難です。この状況は加熱温度が550℃位までほとんど変化しませんが、700℃で焼なまししたときの金属組織はフェライト+球状炭化物であり、球状焼なまし状態の組織にまで変化しています。
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