概要
冷却媒体としては、ガス(空気、窒素など)、水、油、水溶性冷却剤および塩浴があり、冷却能はガスがもっとも小さく、水が最も大きいです。
01 冷却媒体の種類
空気などガスは冷却剤の中では最も冷却能が小さいので、できるだけ急冷したい場合には、ファンによる強制冷却が行われています。SKD61やSKD11などは焼入性が良好ですから、ガス冷却でも焼入硬化することが可能です。
水は最大の冷却能を持つ焼入冷却剤ですが、液温が上昇したり、冷却時の攪拌が不十分な場合には、極端に冷却能が低下して焼むらを生じやすくなります。
焼入油には通常鉱油が用いられ、JIS K 2242では熱処理油として一般焼入用の1種、熱浴焼入れ用の2種および焼戻し用の3種を規定しています。
この他に高分子化合物の水溶性冷却剤や硝酸系塩浴がありますが、これらは水と油の間の冷却能を持っています。
種類 | 特徴 | |
ガス[空気、N2、Arなど] | 冷却剤の中では最も冷却能が小さい。真空炉では、加圧冷却したりファンで強制冷却することによって、冷却能を大きくしている。 | |
水 | 最も冷却能が大きいが、濃度が高くなると途端に冷却能が小さくなるので、30℃以下に保持する必要がある。 | |
油 | 1種 | 50~80℃で使用される一般の焼入れ用である。1号と2号があり、後者のほうが冷却能が大きい。 |
2種 | 100℃以上の高温で使用される熱浴焼入ようである。120℃位で使用される1号と160℃位で使用される2号があり、焼入ひずみの軽減にや有効な冷却剤である。 | |
水溶性冷却剤 | 高分子化合物の水溶液(数%〜30%)で、水よりも冷却能が小さく、油よりは冷却能が大きい。冷却速度は、濃度や液温の影響を受けるので、それらの十分な管理が必要である。 | |
塩浴 | 硝酸系の塩浴で、150〜400℃で使用される。水や油のよ0うな蒸気幕段階がないので焼むらが生じにくく、油よりも若干冷却能が大きい。円テンパやオーステンパの冷媒としてもよく利用されている。 |
02 冷却剤中における冷却挙動
水や油で焼入冷却する際は、上図に示すように、3つの段階を経て冷却が進行します。すなわち、焼入れ直後は処理物は蒸気膜で覆われます(蒸気膜段階)から、冷却速度は最も遅いのですが、特性温度に達するとその蒸気膜が破壊されて、処理物表面から激しく泡が発生(沸騰段階)して冷却速度が最も早くなります。さらに冷却が進行すると冷却速度は遅くなり、対流段階になります。水や油の冷却能を高めるためには蒸気膜を早期に破壊する必要がありますから、強く攪拌するほど有利になります。すなわち、最も冷却能の高い冷却法は、水を用いて噴射冷却することなのです。塩浴の場合には、水や油のような蒸気膜段階がありませんから、比較的均一な冷却速度が得られます。
03 焼入硬さへの影響
焼入硬さに及ぼす冷却剤の影響は、焼入性の優れた合金鋼の場合には顕著に表れませんから、この場合には一般に油焼入れが行われています。しかし、焼入性の悪い炭素鋼などの焼入硬さは冷却剤に極端に左右されます。すなわち、表面硬さ、中心部硬さとも水冷したときに最も高い値が得られます。
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