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等温変態を利用した熱処理とその冷却操作法

等温変態(TTT)を利用した熱処理

投稿日 2023.02.20
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概要

等温変態を利用した等温熱処理には、等温焼なまし、オーステンパおよびマルテンパがあり、それぞれ冷却操作法と熱処理の目的が異なります。

01 等温焼なまし(isothermal annealing)

等温変態を利用した熱処理とその冷却操作法

上図の(A)および(B)に示したように、オーステナイト化温度からTTT曲線のノーズ付近(550~650℃)まで急冷した後、変態終了まで等温保持する焼なまし法です。完全焼なましよりも大幅に処理時間が短縮されるため、機械構造用合金鋼や高合金鋼にはよく利用されています。得られる金属組織は完全焼なましと同様にフェライト+炭化物です。

02 オーステンパ

この処理は、オーステナイト化温度は通常の焼入温度と同じで、具体的な冷却操作を上図の(C)および(D)に示します。Ms点以上の所定の温度に保った熱浴中に焼入れし、等温保持によって過冷オーステナイトが変態を完了した後、引き上げて冷却します。得られる組織はベイナイトですから、別名ベイナイト焼入れとも呼ばれています。

熱浴の温度は300~500℃の範囲で400℃前後の例が多く、低いほど高い硬さが得られます。オーステンパ処理を施したものは、通常の焼入焼戻品に比べて、粘り強い性質を呈するため、ばねの熱処理法としてよく利用されています。

 

03 マルテンパ

マルテンパの冷却操作法

この処理は上図に示すように、焼入温度からMs点直上または直下の温度に保った熱浴中に焼入れし、処理品の表面と中心部が同一温度になるまで等温保持した後、ベイナイト変態前に引き上げて空冷します、この操作により、過冷オーステナイトからマルテンサイトへの変態が徐々に進行し、しかも処理品全体が均一に冷却され、焼割れ焼入変形が軽減されます。

冷却過程では、フェライトの析出やパーライト変態を避けるために、等温保持温度までは急冷する必要があり、しかも適用鋼種は焼入性の良いものに限られます。別名マルクエンチとも呼ばれ、冷却操作としては階段焼入れや時間焼入れです。

等温熱処理の名称と金属組織

記号 熱処理の名称 金属組織
(A)(B) 等温焼なまし フェライト+パーライト[(B)のほうが微細で硬い]
(C)(D) オーステンパ ベイナイト[(C):上部ベイナイト、(D):下部ベイナイト]
(E) 一般の焼入れ マルテンサイト[最も硬い]
(F)(G) マルテンパ(マルクエンチ)
等温変態(TTT)を利用した熱処理
投稿日 2023.02.20

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