概要
焼入性とは、焼入硬化深さの大小を支配する性能です。質量効果とは、焼入硬化深さに及ぼす処理品の断面寸法の影響の大きさです。
01 焼入性
鋼の焼入性を測定する方法として、JIS G 0561に「鋼の焼入性試験方法(一端焼入方法)」が規定されています。この方法は、下図に示すように、直径25mmでつば付きの全長100mmの円柱試験片を使って、焼入性を測定します。
上図のように、5種類の焼入性を保証した構造用綱鋼材について、上限と下限の中間値による焼入性曲線を示します。焼入端付近の硬さは、炭素含有量の多い綱種ほど高くなっており、最高焼入固さは炭素含有量に依存することがわかります。また、焼入端からの硬さ推移曲線において、焼入性に関しては、炭素以外の合金元素(特にCr,Mo)が有効に作用していることがよくわかります。
02 臨界直径
質量効果とは、断面寸法の大小で焼入硬化層深さの異なる度合いのことをいい、鋼材の特性だけでなく、焼入れ時の加熱や冷却条件まで影響を及ぼします。
内部への焼入硬化程度は、一般には臨界直径によって推定しています。臨界直径とは、中心部まで50%以上のマルテンサイトを得ることができる最大直径のことをいいます。臨界直径に及ぼす要素として、下図のように、材料に関するものと焼入条件に関するものがあります。
要素 | 効果 | |
材料 | 結晶粒度 | 大きいほど臨界直径は大きくなる |
合金元素 | Mn、Mo、Cr、Niは臨界直径を大きくする | |
焼入条件 | 焼入温度 | 高いほど臨界直径は大きくなる |
加熱時間 | 長いほど臨界直径は大きくなる | |
冷却剤 | 冷却能が大きいほど臨界直径は大きくなる |
03 質量効果に及ぼす合金元素、焼入温度、焼入冷却剤の影響
上図は、直径25mm、長さ55mmの各種機械構造用鋼について、850℃から焼入れしたときの中央部横断面の硬さ分布を示したものです。鋼種間の明確な差異が認められており、質量効果に対する合金元素の重要な役割が明らかです。
また、共析炭素綱であるSK85について、3種類の焼入れ温度および3種類の焼入冷却剤の影響を示します。表面硬さは、焼入温度や焼入冷却剤に関係なく同一の値が得られていますが、高めの温度から焼入れすることは、質量効果の点で有利です。冷却剤の中では水の冷却能が最も大きく、油とソルトは同程度であることがわかります。
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